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『チャイルド44 森に消えた子供たち』──秘密警察が警察になる時(★★★★★) [映画レビュー]

 『チャイルド44 森に消えた子供たち』(ダニエル・エピノーサ監督、2014年、原題『CHILD 44』


 


 ミステリーというものは、どのような設定でもできるものだと感心する。44人もの子どもたちの連続殺人が起きる。しかし、場所は、「殺人などない」とされている、全体主義国家時代、スターリン政権下のソ連である。「殺人などない」とされているものの、国家はテキトーに犯人を「割り当て」、粛正して終わらせる。44人子どもが殺されて、44人犯人がおり、その1件は事故で片付けられる。


 しかし、秘密警察のエリート、トム・ハーディは、それらの殺人事件に共通点を見出す。これが現代アメリカなら、ただ刑事が事件を追っていくというストーリーになるが、本作は、「探偵」役は、その秘密警察官であり、真に事件を追うなら、国家を相手に戦わなければならない。あくまで、困難な状況下で、事件を探っていくという、これまであまりなかった複雑なストーリーが展開する。


 密告、裏切りが横行する時代、小学校教師の妻、ノオミ・ラパスも、秘密警察の夫に怯えている──。しかし、妻がスパイの疑いをかけられるに及んで、秘密警察の夫は、国家を敵にしていく。夫婦はすんでのところで処刑を免れ、辺鄙な町へ追放される。そこでも、子どもの猟奇殺人が起こっていた。その地の警察署長、ゲーリー・オールドマンは、最初は頑固者といった感じでトムに接するが、やがて、トムの熱意を知り、自分も事件を詳しく調べていく──。


 結局、何が言いたい映画であるかと言えば、主人公の秘密警察官が、真の警察官になっていく話なのである。「殺人などあり得ない」〈ユートピア〉に、殺人事件を存在させる話なのだ。紆余曲折あり、秘密警察の男は、国家に再評価される。幹部に、「何が望みだ?」と聞かれ、「警察局に殺人課を作ってほしい」と答える。ここから、ソビエトが近代国家へ一気に変貌していったとも思えないが、端緒が開かれていくことを暗示させる。現にこのドラマの年、1953年、スターリンは死去している。


 主人公のトム・ハーディーは、かなりいろいろな役柄、とくにいかつい役を演じるが、たらこ唇が特徴で(笑)、どんな髪型体型をしていても、すぐ彼とわかるし、瞳が妙にナイーブな光を見せるのである。だから、本作のような、どこかに繊細な部分を残している秘密警察という、複雑な役柄もよく体現している。ソ連の物語でありながら、主要登場人物は、英国俳優である。しかし、フィクションを作り上げるには、それでよいと思う。使われている言語も英語であるが、すべての登場人物が、どうも、ロシアなまり風に英語を発音していたように思われる。「レキシもの」のような色調であるが、カメラの位置が、近距離で、すぐにドラマにのめり込めるようにできているのも印象的であった。



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