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『教授のおかしな妄想殺人』──よくできたミステリー(完全ネタバレ注意!)(★★★★★) [映画レビュー]

『教授のおかしな妄想殺人』(ウディ・アレン監督、 2015年、原題『IRRATIONAL MAN』)


 


 本作で一番いいのは、サントラである。ラムゼイ・ルイス・トリオの「The "In" Croud」がテーマ曲のように何度も繰り返される。この軽いノリ、のなかで展開される、完璧なミステリー。


 魅力男、ホアキンに腹を出させ、でもグリーンの瞳はやはり魅力的で、いかにも、アブナイ魅力的な教授である。きょうび、アメリカの、哲学の、教授といえば、こんなものなのか。ハイデガーにカントに、フッサールにキルケゴール、出てくる出てくる、「ほんのさわり」だけね〜。だが、ホアキン扮するエイブは、言う。「きみたちに、おれから学んでほしいことは、哲学は教科書では学べないということだ」。


 定石通り、頭脳明晰、美貌の女子学生、エマ・ストーン扮するジルを、一応拒みながら関係する。アメリカの大学っていえば、教授と教え子はこんなにフランクにつきあるのか? ジルは今のボーイフレンドと二またかけている。ホアキンと二人で遊びにいった遊園地の射的で、ホアキンが大当たり、「なんでもすきなものを」と、景品を取らせてもらうジル。でっかいぬいぐるみとか、オモチャがいろいろあるなか、ジルは小さな懐中電灯を取る。真っ赤な懐中電灯。「実用主義なんだな」と教授に笑われる──。


 喫茶店で偶然聞いてしまった、悪い判事の話。人生に生きるイミを見失って、生きることなどどーでもいいと、ロシアンルーレットにさえ興じて見せるエイブだったが、そうだ、その悪い判事を殺そう! と思いつくや、ジョギング中の判事に近寄り、ベンチに置いた彼のジュースと、青酸カリ入りジュースを置き換える。どうやら成功したらしい。判事が死んだとニュースで流れる──と、これは、すべて、ジルがエイブに伝えるという形で知らされる。


 しかし、青酸カリは化学室から盗み、その化学室の鍵は、関係している人妻教師リタのバッグから盗んだものだ。ジルはそれをリタから聞き、エイブが殺したのだと確信する。問い詰める。白状する。混乱するジル。アブナイ魅力も、度がすぎるとね(笑)。無実の人間が逮捕されたことを知り、ジルはいっそう慌てふためき、エイブに自首するように言う。「一人殺せば、もっと殺したくなる」、ジルはそう言っていさめるが、そうなんだ、と、エイブはナットクして、事情を知っているジルをも殺そうと、エレベーターに細工する。扉が開いても、エレベーターの箱は来ないようにして、地面まで真っ逆さま──。彼女を待ち伏せ、そのエレベーターに彼女だけ放り込もうとするが、ジルが抵抗する。もみ合っているうちに……。あ、あーッ! 足を滑らせ、エレベーターに入ってしまったのは、教授の方だった──。なんで足を滑らせたの? ジルのバッグから、例の懐中電灯が落ちて、それを踏んでしまったから。


 これによって、教授は「望みどおり」人生と縁を切ることができたのである(笑)。ここで、原題『Irrational man(不条理男)』でも生きてくる。ジルはボーイフレンドとよりを戻し、彼と行った旅先の海岸で、エイブのことを思い出すのだった。「哲学は教科書では学べない」ってね。


 一見ロマンチックコメディであるかのようなミスディレクション、機関銃のように飛び交うセリフの皮肉、細部の伏線……などを、洗練された音楽でつないでオワリの、まあ、よくできたミステリーだわ(笑)。エマ・ストーンの顔(とくに、しゃべるときの、口から歯の出る感じ)が嫌いだが、女子大生ができる実力派は、今のところ、彼女しかいないのかもしれない。ホアキンは、本作では彼の魅力全開というわけにはいかなかったが、こういう人が現実の大学教授なら、十分に魅力的だろう。



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