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【詩】「右側に気をつけろ」 [詩]

「右側に気をつけろ」


(Soigne ta droite)


夜明けまでに詩を書いて(もちろんフランス語で)パリのネルヴァルの住居に届ければ、彼の自死を免れさせることができる──。


というお告げ。


はたして誰からの?


などという考えはいっさい浮かばず、こちら、東洋の白痴は、エールフランスは夜中のフライトの命名募集に応募し、みごと当選!

羽田からパリへ向かう。あ、そのフライトの名前?

「サンテグジュパリ」


紙と鉛筆を手にしているけど、まだ詩はかけてなくて、


すでにパリの街路を彷徨中。


えー? ネルヴァルの住居って……? たしか……うねうねくねった路地の中の路地。迷路のような奥。


「すみません、このへんにネルヴァルさんの住居知りません?」

「だれ、その人」

「作家……っていうか」

「作家? ここにはたくさんいるけどね」

「どこかで聞いたその言い方……」


港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカあノノみたいな。


「頭の中になにか入ったっていってたなー。何ヶ月も引き籠もったまま姿を見せなかった。ジェラールとかなんとか。ウブなネンネじゃあるまいし、収容所のアンネじゃあるまいし、おかしーぜ、あのオッサン」

「そう、そのオッサンです」

「あんた日本人だろ?」

「そうですが、どうしておわかりに?」

「日本語しゃべってんじゃん」

「あ、そうか。じゃあ、あなたも日本人?」

「見りゃわかるだろ? おれは、ウクライナ人よ」

「そういうややこしいこと、言わないでください。詩が違う方向へ言ってしまうから」


日本語を話すウクライナ人について、ベンヤミンは書いている(ウソ)。

物語作家について書いている(ホント)。


「闇が光に打ち勝とうとしている。しかし光は夜の背後から襲ってくるだろう」

そう朗読する、フランス人の、いやスイス人の白痴は、やけにいいコートを着ている。


「それで、詩は書けたかね」

「こんな感じでどうですか?」

 

La nuit ou Baudelaire tombe

La fenetre, la vitrine, les fleurs brillent

Les choses simples commencent a raconter leur propre histoire


(ボードレールが降る夜

窓やショーウインドーや花々が輝く

単純な物たちが彼らの物語を語り出す)


「ま、そんなもんだろ」

スイス白痴は、先に立って歩き、

とある建物、古い修道院のように見えたが、その入り口に立ち、

コートのポケットから古風な鍵を取り出した──。


けれど、そこにわれわれが見出したものは──


「しまった、遅すぎた」

「遅すぎたってねー、あんた……」

 

おそらく梁から下がっていたであろう「綱」は切れて、

クェッションマークに似たかたちで、「それ」の背後から

「這いだして」いた。

 

「それ」は黒々とひからび、しなびたカボチャのように、

いっさいの物語を拒絶していた。


だがしかし、

 

光が背後から襲うだろう。


 

 


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