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『ベイビー・ドライバー』(今のところ)本年度ベスト1(★★★★★) [映画レビュー]

『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト監督、 2017年、原題『BABY DRIVER』)

 

 映画作りのコンセプトがまったく違う。まず音楽があり、それに合わせて場面などを作っている。主人公は、通称ベイビーの天才ドライバーだが、ワケありで、犯罪を操るドクこと怪しげな紳士(?)ケヴィン・スペーシーに遣われている。映画の解説には「逃がし屋」。実際はそれほど、「おとな」な感じはしなくて、「ぱしり」という感じだが、一応「フリー」で「案件」ごとに、ドクから電話でオファーされる「状況」しかし──

 オープニングからして普通じゃない雰囲気を漂わせる。三人の男女が銀行強盗をしているのを車の中で待っている(その間、iPodをセットしている場面が映し出されるが、それがちょっとした飾りではなく、大いに本作の「核心」となる)のだが、サングラスをしたその表情さえただものではない感じで、しかも通称通りのベビーフェイスはよくわかって、非常に若い、少年のような感じもする。それが三人の強盗犯たちが走って車に乗り込んでくるや否や、すぐに車を発進させるが、そこからベイビー・ドライバーのセットしていた音楽が始まり、ベイビーの目を見張るようなドライテクニックが展開されて度肝を抜く。

 

 仕事が終わってガレージのようなアジトで金の分担となると、ベイビーはコーヒー四つを買いにやらされる文字通りの「ぱしり」となる。しかし──

 コーヒー四つを紙のトレイに入れて片手で持って通りを行く帰り道も、普通映画とは違って、ベイビーの「舞台」となる。そこでもiPodの音楽を聴きながら(映画では当然、観客と共有されるのだが)、踊るように歩く。それが、音楽担当者と振り付け師を周到に起用した演出の見せ所でもあるだが、これまた目を見張る。

 ベイビーは幼少の頃、口論する両親の車(運転は父親)の後部座席に乗っていて事故に遭い、自分だけが生き残った過去を持つ。ゆえに耳鳴りの障害が残り、それを打ち消すために常に音楽を聴いている。しかし、それには、さらにリアリティがあって、母親は「歌手」であり、音楽好きな両親が彼に、おそらく「初代のiPod」を誕生日のプレゼントとして与えていた。この、アルミのくるくる回すわっぱ(名前ド忘れ)で音楽等を設定する初代iPodを、ベイビーは今でも持っていてときどき取り出す。

 

 そういうディテールは見事に伏線として回収され、かつ、スタイリッシュで、かつ、悪いことはいけないというまっとうな思想で貫かれてもいる。ベイビーは不良でもチンピラでもなく、黒人の養父と暮らす心優しい青年で、同じく、「労働者階級」の、ウエイトレスの娘と、ピュアな恋をする。そのすべてが、今どきのすさんだ世の中に一滴の清涼剤となっている。

 かつ、ベイビーのピュアさを際立たせる、アクの強い悪役に、ケヴィン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、両御大を迎え、エドガー・ライト監督独壇場の、皮肉たっぷり、洗練バッチリの作品となっている。



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