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【詩】「秋の鳥」 [詩]

「秋の鳥」

 

湿った秋の、曇った空のもと

キーキーと鳴く鳥たちよ

どんよりとした土曜日の朝の

 

中国の詩人たちの

貴族の官吏の市民の

七百年伝わる感情は

伝統という容れ物と

「いま」という時間と

その二つを切り結び

 

鳴き声が拡げる空間

影がつくる意識の

一日というパラダイム

を祝福せよ



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【詩】「石灰工場」 [詩]

「石灰工場」


 


密室にして聴覚に関する論文を書くために


石灰工場を買い取った男がいた


ひとは完全に音のない部屋にいると


気が狂うという


実験台にされた車椅子の妻は


絶えず編み物をしていたが、


後頭部を二発の弾丸で撃ち抜かれ、


脳みそを飛び散らせて死んでいた。


誰もが男が犯人だと思うだろうが、


男は男で、家畜の糞溜めで、凍死しして


干からびていた。


犯人捜しにもっとも熱心なのは他ならぬ


語り手で、村人たちのうわさ話をあれこれ


詳細に報告していくのだった


 


殺害状況の再構成


「悲劇的フーガの変奏曲」


調べれば調べるほど入り込んでいく迷路


結末はどこにもなく、プロセスがあるのみ


そのプロセスが使われるのは作曲のなかのみ


「殺人は形而上学的探求のための通訳」


 


男に論文が書けないのは、書いてしまえば


殺すことになるから


 


改行なし





 


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【詩】「末摘花」 [詩]

【詩】「末摘花」


 


女を探していた十八の春の宵、亡き人を忘れるための恰好の女を


それは赤鼻のトナカイのような女で、琴だけうまく、引っ込み思案で


鼻はトナカイというより象のようで、


季節だけ秋へと移っていった、光が透明で、それはなにの蒸留?


もちろん忘れがたき女の匂いの蒸留で


そうやって私の青春の時間は過ぎていく


雪の降る頃にはその姫君の邸に入れたのだが、


あまりの貧しさに心は凍った、


そんな思い出。私は前の女の匂いを秘かに飲み干すことで耐え


時間が過ぎゆくのを待った。


こころは決して象形できず、ライバルの男友だちさえ筋書きにははまらない


お互い激しく嘆いてこの時間を経過する


 それは一九〇五年に発表された「動いている物体の電気力学」


 かかるひとびとの末ずゑ、いかなりけむ。



 


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【詩】「新新ドイツ零年」 [詩]

「新新ドイツ零年」

 

今更。青春18切符を使って旅するわけにはいかない(そういうオッサンもいるにはいるが)。

不快な風景や湿気に妙なロマンを見るわけにはいかない。

大都市でもなく農村でもない街を人間に見たて、長編詩を書いて見せるわけにはいかない。ましてや

学歴をロンダリングするわけにもいかず、垂れ下がったお肌のために三万円のクリームを買う金はなく、

御年六十四歳のイザベル・ユペールが体を張った強姦され役をするのに、『風姿花伝』の、「引け際が肝心」を教えたいが、本人その気なら打つ手はないだろう。

はるか先だと思っていた老年が目の前にやってきていて、レミー・コーションは、目の前の錆びた有刺鉄線を見つめるばかりだ。

だいたいにおいて、おフランスの女に「お役ご免」はない。大奥にも「定年」はあったと思うが。フランス人は、「退け時」を知らない。それはフランスの文化ではなく、フランス女は、死ぬまでじたばたあえぐだろう、女であろうとして。疲れるナ〜。

若さが書かせる詩。それで評価されてしまって、間違ってしまう生。その汗の匂いのする詩集を、遠い眼で眺めるばかりだ。宇宙とか未来とか、そんなものが金ぴかに輝いている。だけど、もはや詩のなかに書き込むわけにはいかない。

『ドイツ零年』は終わり、『新ドイツ零年』も過ぎ去った。今はドイツが力を持つ。帰れなくなったスパイではなく、帰り道を忘れたスパイ。スパイだったことも忘れ、わこうどが旅した詩集を読むともなく読んでいる。そして確かにわかっているのは、今更、格安航空の不快もなにかの特権のように思うわけにはいかないということだ。ある優越感で、低開発国(というのか、いまも)の風景を眺め、それをポエジーに変換するわけにはいかないオバサンなのよ。とゆーか、婆さんといってもいいけど。先に婆さんと認識してまった方が勝ちなのだ。いつまでもぐじぐじと女であろうとして、プチ整形したり、句会に出たり、ランチや飲み会に金使って、なにかやってるみたいにもがいて、完全なる老いがやってくるのを待っているよりは。早々とベケットのように、なにもかも放り出して、無、と戯れた方が勝ち。

 

端正な老成がほしい。若者に迎合しない老人たちには「過激な文献学」がひらかれている。

 

「ロシアなんて、たった一億四千万人しかいないのに、いったいなにができるというんですか?」と、おフランスの統計学者エマニュエル・トッド。

 

「いや、プーチンはヨーロッパでの覇権を狙っている」と、『ガーディアン』紙の記者。

 

いずれにしても、人間の「青春」は、確実にトドメを刺しておかねばならない。

 

永遠の青春が許されるのは、ギリシアの神だけだ。





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【詩】「売春婦たち」 [詩]

「売春婦たち」

 

「外見は陽気でも、この女たちはどこまでもつづく不安のなかに生きていた。彼女らは手入れをおそれ、『サラダ菜洗い(パニエ・ア・サラド)』(囚人護送車)と警察署と監獄をおそれていた。病気になることをおそれ、知らない客の一人一人をおそれていた。相手はひょっとしてサディストかもしれず、偏執狂かもしれず、危険な狂人かもしれず、切り裂きジャックかもしれないではないか? 女たちは同様に、自分たちの『保護者』を、その気紛れと、機嫌の向きかげんをおそれていた。現代の宗主たる『保護者』は、自分の『保護する女』を、売春宿に譲渡することも、同業者に売ることも、外国へ売りとばすことも思いのままだった。身をかくしたり、反抗したりする女は不幸なことになった。罪ははげしく問いつめられ、『罰金刑』か『死刑』さえ課せられた。ミリューの容赦ない手は、女のあとを追い、いたるところで女を捕らえた」(『未知のパリ 深夜のパリ──1930年代』写真と文、ブラッサイ、飯島耕一訳より)

 

80年が経った──。いろいろな事件、とくに戦争のかげに、「パリの売春婦たち」の存在は忘れられていった──。けれど、(とくに)女性の体になんらかの商品価値を認め、それを商売するという行為は連綿と続いていた。

買い手の欲望があるからか。

いずれにしろ、実存主義者が「疎外」と呼んだ、人間を物と同等に扱う行為だ。

2017年、アマゾンという「三途の川」の向こう側に拡がる、「ネット界」にも、売春婦たちがいて、詩を書いたり、勉強したりして、堂々と自己表出している。

それが悪いのか? りっぱな職業ではないか! と、ネット界の売春婦たちは主張する。

りっぱな? 

清潔なホテルや、ごくノーマルな容姿と態度の客との「交渉」を、感傷などをまじえて詩に書いている。

そういう売春婦たちには、「支援者」がいる。

売春婦たちは、「売春」という直截な言葉を嫌う。

もっと「明るい」、もっと「清潔な」、もっと「聞こえのいい」言葉を求める。「風俗」といえば、何かが消える? たとえば、彼女たちを縛っているものの姿が。

すきで選んだ職業に見える。

けれど、すきでなど、選んだわけではない。

と、私は考える。

実態は、80年前のパリの売春婦たちとなんら変わってはいない。

できることなら抜け出したい。

でも、できない、のっぴきならないワケがある。

それを、おおやけにすることはできない。

だから、彼女たちを責める人々を呪う。

マムシのように牙をむいて見せる。

おおよそは、それは、昔も今も変わっていないと推察する。

お金の問題。

なんらかの理由で、彼女たちを、お金が縛っているのだ。

だから詩のなかに、せめてもの夢を見たくて、

清潔なホテル、ノーマルな客との、まるで「恋人同士」であるかのような「交渉」を描く。

この何よりも深き絶望を、かつての市川房枝のように、警鐘をがんがん鳴らし、彼女たちに嫌がられながら、鎮魂するのみ。

そんな夢を見てはいけない。

そんなのは、夢ですらない。

清潔なホテルとノーマルな客との「交渉」が。

どこまでもどこまでも墜ち続け、闇の真の姿を見届けて、誰かのベアトリーチェになるしかない。

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【詩】「記憶で語れ、ソクラテス」 [詩]

「記憶で語れ、ソクラテス」

 

プラトンもろくに読んだことはない私だが、ソクラテスの最後は刑死で、毒ニンジンジュースを飲んで死んだということは知っている。そのジュースは誰が絞ったのかなとか、そういうどうでもいいようなイメージが、カゴメのニンジンジュースを飲んでいるとき浮かんでしまって、それは人間のやさしさなのかもしれなくて、最果タヒは、宇宙の開闢について漠然と書いている。

 

そう漠然と。それは彼女(彼?)のスタイルで、すべての知的なものを、太古の砂浜に埋めるように隠している。それは真言密教の言葉にも通じる言葉で、シニフィアンとシニフィエが絡み合っているソシュール言語学の向こう側に森があって、その木の葉っぱには無数の大小の穴が開いていて、その穴の一つ一つから何か響くものが流れているという一種の世界観を表現しているように見えるのだが、そのおぞましい世界を、地球の日本の21世紀のやさしい言葉に隠している。

 

それは空海がジュリア・クリステヴァに化けているにも似ていて、死もそこでは細い絹糸のように、あなたの愛を閉じている。

 

詩というのは、普通日本では、誰でも書いていて、詩集や同人誌に詩を発表して、取り上げてくれそうな、またまた詩人たちに配布しているが、たいていはどこか「くすぶっていて」、まさに自分の詩集が何万部も売れたり、映画化されたり、商業誌から依頼がきて、決して安くはない原稿料をもらったりすることなど、ほとんどあり得ないなーと、ぼんやりと寝床で朝の始まりとともにちらりと、そんな、欲望と羨望と諦めの入り混じった感情が夢のように存在したかもわからないまま、ちくりと感知された記憶だけ残していくのを他人ごとのように思ったりするのだが、実際、最果タヒという詩人は、すでにそういうゾーンに入り込んでいて、そこでは、大御所詩人もひれ伏すような跋文を贈っている。この「女神」のご神体は、女神なのか男神なのか、ギリシアなのか日本土着なのか、ボルヘスでさえもわからないことになっているのを、ポカリスエットに含まれる塩分より確かな感触を、ギリシアの浜辺に埋める夢を見始める。

 

この「女神」は、『ビニール傘の詩』という、ほんとうに見過ごしてしまいそうなタイトルの詩のなかに、人類の歴史を書き込んでいる。

 

そう、歴史。それはほとんど固有名詞によって成り立っている。それを過少使用するということは、歴史を毒のように隠しているということだ。その言葉を読むことは、毒ニンジンジュースを飲むことに似ていないことだけは、カゴメのためにも言っておかなければならないだろうと、ベンヤミンの「ボードレールにおける第二帝政期のパリ」を読みながら、ああ、フランス革命におけるバリケードはわれらのスタバなんだと思いながら、断言しておこうと決心することは、その神殿を踏み越えていくことなんだろうか。

 

 

 


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【詩】「鯨」 [詩]

「鯨」

 

ナンタケットと言えば、鯨。鯨を求めて、ここから船出する集積地。そこはきっと鯨の脂にまみれている。『モーヴィー・ディック(白鯨)』(1851年刊)よりはるかに早く、エドガー・アラン・ポーも、この地の名を冠した長編(!)を書いている(「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」(1837年〜38年))。逆に言えば、だからこそ、ナンタケットなどと、すらすら出てくると言える。果たして、何が言いたくて、この詩を書き始めたのか──?

 

海、深い青黒い海、鯨、捕鯨、嵐、凪、幻、食糧不足、餓死、人肉食、海、深い緑の海、鯨油業で成り立っている町……。

 

集合名詞としての鯨。そんな巨大な「サカナ」から、なぜ明かりの材料を取り出そうとしたのか? 

 

そして二人の作家、ハーマン・メルヴィル(1819年〜1891年)と、エドガー・アラン・ポー(1809年〜1849年)は、一個の鯨に注目する。

 

人生という脂にまみれ、創作という幻を見、死へ帰還する。歴史という海は、ようやく動きはじめる。夥しい事象の漂流物の下。

 

鯨よ、鯨よ。私はまだ、その極めて小さな種類のおまえにも、水族館ですら対面できないでいる、保育園の遠足不参加に丸を付けた紙を、通園かばんに入れている園児だ。だがいつか、ナンタケットのはるか沖の大西洋上で、最も巨大なおまえに出会いたいと思っている。

 



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【詩】「反源氏物語」 [詩]

「反源氏物語」

 

 西暦にして1000年頃、ある物語が書かれたらしいが、それは残っていない。ではなぜそれがわかったかというと、ある天才理論物理学者がブラックホールの研究中、仮説として出した。周知の通り、量子力学では、すべての粒子は反粒子とペアになっている。理論上、宇宙空間は第11次元まで存在し、その物語は、「正」の世界の、余剰次元と呼ばれる次元、すなわち、第5次元以上に存在する。

 

 書かれた物質、紙だったら灰のようなもの

 筆記具、墨ならば、炭素

 作者、人間の痕跡

 そして何よりも、「光」は「見る」ことと同義である。光が存在しなければ、人の視覚はものを見ることはできない。

 

 しかしそれは、可能性でしかない。アインシュタインは完全に間違っていた。

 星は自らの重力で崩壊し、ブラックホールを形成し、その内部では、情報は失われる──。

 

 太陽の熱に灼かれる反歴史

 ブラックホールに消えたまま剥奪された、

 欲望

 は、物質ではないから「反」は存在せず、

 真言密教に彩られたテクストは

 全長27キロメートルの大型ハドロン衝突型加速器のなかで、

一瞬だけ浮かび上がる

 すなわち、ひとの脂がわずかに付着した反桜の花びら

 

 

 


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【詩】「若紫」 [詩]

「若紫」

 

ぼつりき

ぎきはは

みせつう

おがうゆ

そ・し・て

わ──は、わらはのわ

か──は、髪は扇をひろげたるやうにゆらゆらとして

む──むらさきの紙、武蔵野の露

ら──らうたしのら

さ──さはる事どものありて

き──きみは、三人称

拉致、誘拐、ストックホルム症候群

   かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな

   いかなる草のゆかりなるらん


 


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【詩】「夕顔」 [詩]

「夕顔」

 

夏の風がきみをその女のもとへ運んだ。

むしろ匂つてゐたのは忍冬で、

十七歳のきみは身体を狂はされ、

その不調が生霊の正体だつた。

だが、恋人は植物のやうにはかなくなつた。

それこそ夕顔の精だつた。

二人して小さな価値をつくつてみないか? ほら

ここに、そろひのタトウなど彫つて

でもきみはあへてぼくに問ふ

ぼくたちの美はどこにあるのか。

それはきみの瞳のなかに

これまで喰らつてきた恥と汚辱が光に変わるとき、

   おぼえこそ重かるべき御身のほどなれど、

   ソラリスにては時はあらず。


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