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【訳詩】T.S.エリオット『四つの四重奏曲』より [訳詩]

T.S.エリオット『四つの四重奏曲』より

 

現在の時間と過去の時間は

両方ともたぶん未来の時間の中に存在し、

そして未来の時間は過去の時間の中に含まれている。

もしすべての時間が永遠の現在なら

すべての時間は取り戻すことができない。

かつてあったかもしれないものはひとつの抽象概念かもしれない

それは永遠の可能性にとどまり

想像のなかにのみある。

かつてあったかもしれないもの、あったものは

ひとつの終焉、永遠の現在を示す。

記憶のなかの足音の響き

われわれが通らなかった通路に降り

われわれが決して開けなかった扉に向かう

ローズ・ガーデンのなかへ。私の言葉は

きみの心にこのように響く。

      しかしなんの目的で

ローズ・リーブスの鉢の上の塵をかき乱す

私は知らない。

 

****

 

From T.S. ELIOT "Four Quartets"

 

Time present and time past

Are both perhaps present in time future,

And time future contained in time past.

If all time is eternally present

All time is unredeemable.

What might have been is an abstraction

Remaining a perpetual possibility

Only in a world of speculation.

What might have been and what has been

Point to one end, which is always present.

Footfalls echo in the memory

Down the passage which we did not take

Towards the door we never opened

Into the rose-garden. My words echo

Thus, in your mind.

                              But to what purpose

Disturbing the dust on a bowl of rose-leaves

I do not know.

 


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【訳詩】「地獄でのひと季節」(ランボー) [訳詩]

 

「地獄でのひと季節」アルチュール・ランボー(拙訳)

 

*****

 

 往時、おれの記憶が確かなら、おれの生は饗宴だった、そこでは心は完全に解放され、葡萄酒は全部流れ出ていた。

 ある夜、おれは美というものを膝に座らせた。──そしてそれが苦しみだと知った。──そしておれはそいつを罵った。

 おれは正義に対して武装した。

 おれは逃走した。おお魔女らよ、不幸よ、憎しみよ、

おれの宝物庫を託したのは、おまえらだ!

 おれはすべての人間的な希望をおれの精神のなかに隠すのに到達する

 心からの喜びをもってそいつを絞め殺すために残忍な獣からそっと飛んだ。

 

 

「地獄の季節」アルチュール・ランボー(小林秀雄訳)

 

 *

* *

 

 かつては、もし俺の記憶が確かならば、俺の生活は宴であった、誰の心も開き、酒という酒はことごとく流れ出た宴であった。

 ある夜、俺は『美』を膝の上に坐らせた。──苦々しい奴だと思った。──俺は思いっきり毒づいてやった。

 俺は正義に対して武装した。

 俺は逃げた。ああ、魔女よ、悲惨よ、憎しみよ、俺の宝が託されたのは貴様らだ。

 俺はとうとう人間の望みという望みを、俺の精神の裡(うち)に、悶絶させてしまったのだ。あらゆる喜びを絞殺するために、その上で猛獣のように情け容赦もなく躍り上ったのだ。

 

 

"UNE SAISON EN ENFER"   Rimbaud

 

*****

 

 Jadis, si je me souviens bien, ma vie était un festin où s'ouvraient tous les cœurs, où tous les vins coulaient.

 Un soir, j'ai assis la Beauté sur mes genoux._____Et je l'ai trouvée amère._____Et je l'ai injuriée.

 Je me suis armé contre la justice ! 

 Je me suis enfui. Ô sorcières, ô misère, ô haine, c'est à vous que mon trésor a été confié !

 Je parvins à faire s'évanouir dans mon esprit toute l'espérance humaine. Sur toute joies pour l'étrangler  j'ai fait  le bond sourd de la bête féroce.

 

 


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「やさしいテムズ川よ……」 [訳詩]

 

Sweet Thames, run softly till I end my song,

Sweet Thames, run softly, for I speak not loud or long.

 

    (From T.S.ELIOT "The Fire Sermon" in The Wast Land 1922)

 

****

 

やさしいテムズ川よ、私が歌い終わるまでゆるやかに流れておくれ、

やさしいテムズ川よ、私は大声で長々と話さないから、ゆるやかに流れておくれ。

 

(T.S.エリオット、『荒地』「Ⅲ 火の説教」より)

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【訳詩】マラルメ「告白」 [訳詩]

【訳詩】

 

「告白」 マラルメ

 

私の魂はきみの額に向かう、おお穏やかな恋人、

赤茶色の染みをまき散らされたひとつの秋が夢見る額

そしてきみの天使の瞳を漂う空に向かう

入れ、物寂しい庭園へ入るように、

忠実なれ、蒼穹へ向かうひとすじの白い噴水のように!

──青白くまじりけのない十月によって柔らかくなった蒼穹へ

ひとすじの噴水は大盤に彼の無限の憂愁を映す

たまり水の上の葉っぱの褐色の最後は

風のなかをさまよい、冷たい跡をつけるが、

長い光線の黄色い太陽はのたうつままに。

 

****

 

上田敏訳

 

「磋嘆(といき)」

 

静かなるわが妹(いも)、君見れば、想(おもひ)すゞろぐ。

朽葉色に晩秋(おそあき)の夢深き君が額に、

天人の瞳なす空色のまなこに、

憧るゝわが胸は、苔古(こけふ)りし花苑(はなぞの)の奥、

淡白(あはじろ)き吹上(ふきあげ)の水のごと、空へ走りぬ。

 

その空は時雨月(しぐれづき)、清らなる色に曇りて、

時節(をりふし)のきはみなき鬱憂は池に映ろひ

落葉の薄黄(うすぎ)なる憂悶(わずらひ)を風の散らせば、

いざよひの池水に、いと冷やき綾は乱れて、

ながながし梔子(くちなし)の光さす入日たゆたふ。

 

***

 

註:まったく同じ風景を言ってるんですけどね(笑)。

 

***

 

【原文】(アクサン省略)

 

Soupir

 

Mon ame vers ton front ou reve, o calme soeur,

Un automne jonche de taches de rousseur,

Et vers le ciel errant de ton oeil angelique

Monte, comme dans un jardin melancolique,

Fidele, un bland jet d'eau soupire vers l'Azur !

____Vers l'Azur attendri d'Octobre pale et pur

Qui mire aux grands bassins sa langueur infinie

Et laisse, sur l'eau morte ou la fauve agonie

Des feuilles erre au vent et creuse un froid sillon,

Se trainer le soleil jaune d'un long rayon.

 

 

(原文は美しい韻を踏んでいるが、とてもそこまでは写せない、上田敏先達とワタシでした(笑))

 

 

****

 

 

「宮人よ我が名を散らせ落葉川」 芭蕉

 

 

(「落葉」は、冬の季語)

 

 


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『悪の華』試訳1 [訳詩]

Les Fleurs du Mal 『悪の華』より(試訳)

 

「シカシ飽食トイウワケデハナク」

 

奇妙な女神、夜のように褐色で、

ムスクとハバナ葉巻の入り混じった香水をつけ、

なんらかの帯の作品、サヴァンナのファウスト、

黒檀の脇腹の魔女、真夜中の闇の子、

 

SED NON SATIATA

 

Bizare deite, brune comme les nuits,

Au parfum melange de musc et de havane,

Oeuvre de quelque obi, le Faust de la savane,

Sorciere au flanc d'ebene, enfant des noirs minuits,

 

(つづく)

 

*****

堀口大學訳(新潮文庫)

 

「それでも足りない」

 

夜のように鳶色で、麝香と葉巻の混じり合った

かおりを立てる風変わりな女神よ、そんじょそこらの黒人の

魔法使いの手に成った大草原のファウストよ、

黒檀の脇腹をした魔女よ、暗い夜更が生んだ子よ、

 

(私的感想:訳しすぎのような……)

 

****

鈴木信太郎訳(岩波文庫)

 

「されど飽足らずして」

 

夜のやうに栗色で、麝香と葉巻の

混淆した薫を放つ、奇妙な女神よ、

大草原のファウスト博士の黒坊(くろんぼう("ママ"引用者(笑))魔法使の作品よ、

黒檀の腹をもつ魔女、暗黒の真夜中の子よ、

 

(私的感想:なんとか日本語文脈に変換しようとしている)

 

****

 

安藤元雄訳(集英社文庫)

 

「まだ飽きもせず」

 

奇態な女神よ、夜のように色浅黒く、

麝香とハバナのいりまじった香りも高く、

どこかの魔術師、草原のファウスト博士が生み出した、

黒檀の脇腹をもつ魔女、真暗な真夜中の子よ、

 

(私的感想:全体として、「既訳」に遵守している。それにしても、みなさん、des noirs minuits の語順を勝手に変えているんですね)

 

****

 

福永武彦訳(単行本『世界名詩集13「ボードレール 悪の華」平凡社)

 

「サレドナオ足リズ」

 

不思議な女神よ、夜のように栗色で、

麝香とハバナ煙草との匂いを混ぜ、

大草原のファウスト、黒人魔術師の製作品、

黒檀の脇腹をした魔女、闇々の深夜の子よ、

 

(私的感想:リズムは原文にいちばん近い)

 

****

 

私的註:この作品は、4,4,3,3 のソネットである。quelque obi は意味不明であるが、みなさん、obi を「魔術師」と訳しているが、あるいは、そういう意味があるのかも知れないが、自分は無知である。ロワイヤル大辞典を引けば、obi、帯とある。tatami、kimono などのようにフランス語化された日本語のようである。おそらく柔道の、「帯」から来たのだろうと思われる。

 

自分の「有利な点」(?)は、しゃがれ声のミシェル・ピコリの朗読をiPod で毎日聴いていることである。このさりげない、短い文を連ねていくリズムの音を聴いていると、とても、長々と、いかにも美文調には訳せない。

 

 

 


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【訳詩】ウンガレッティ「夕暮れ」 [訳詩]

「夕暮れ」 ジュゼッペ・ウンガレッティ

 

 

空のバラ色が

オアシスを目覚めさす

愛の放浪者のなかの

 

(1916年『喜び』より)

 

****

 

"Tramonto"  Giuseppe Ungaretti

 

Il carnato del cielo

sveglia oasi

al nomade d'amore

 

(1916 "L'allegria" )


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【訳詩】ルネ・シャール「形式的な共有」26 [訳詩]


Rene Char "Partage formel" 26



Mourir, ce n'est jamais que contraindre sa conscience, au moment même où elle s'abolit, à prendre congé de quelques quartiers physiques actifs ou somnolents d'un corps qui nous fut passablement étranger puisque sa connaissance ne nous vint qu'au travers d'expédients mesquins et sporadiques. Gros bours sans grâce au brouhaha duquel s'employaient des habitants modérés... Et au-dessus de cet atroce hermétisme s'élançait une colonne d'ombre à face voûtée, endolorie et à demi aveugle, de loin en loin____ô bonheur____scalpée par la foudre.

 

****

 

ルネ・シャール『形式的な共有』

 

死ぬこと、それは、意識がまさに自らを廃止しようとするとき、われわれにとって、ほどほどに未知であった、というのは、肉体についての知識は、われわれには卑小で散発的な窮余の策を通してしかやって来ないのだから、そういった肉体が活動しているか眠っているかしているある場所について、休暇を取るよう意識を強いることではない。がやがやとうるさい、優雅さを欠いた大きな町、その音は節度ある住人たちが夢中になってたてているのだが……そして、その恐ろしい錬金術の上に、アーチ型に反った、心を痛めた、そして半ば盲目の、人影の柱がそそり立っていた、ときどき──おお、なんという幸福──その影は、雷に頭皮を剥がされるのだ。

 

 

 






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四月は残酷な月 [訳詩]

The West Land(1922) T.S.Eliot


 

 Ⅰ. The Burial of the dead


April is the cruellest month, breeding

Lilacs out of the dead land, mixing

Memory and desire, stirring

Dull roots with spring rain.


 


「荒れ地」 T.S.エリオット

 

1、死者の埋葬


四月は最も残酷な月、死んだ土地から

リラを生やさせ、記憶と欲望を

かき混ぜ、しなびた根っこを

春の雨でかき回す。

 

 

 



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【訳詩】フランシス・ポンジュ「貧乏漁師たち」 [訳詩]

フランシス・ポンジュ「貧乏漁師たち」


 


 引き手が足りず二つの鎖は張られた状態で動かなくなる王の河口で、ガキどもは真ん中カゴのそばで喚く:


「貧乏漁師!」


ここにランタンの下にて申告物の抜粋:


「飛び跳ねて砂の上に消えた魚半分、とほとんどの海へ帰った蟹」


 


(『ものごとの偏見』より)

 



 


Francis Ponge 'PAUVRE  PÊCHEURS'


 


A court de haleurs deux chaînes sans cesse tirant l'impasse à eux sur le grau du roi, la marmaille au milieu criant près des pamiers :


Pauvres pêcheurs!


Voici l'extrait déclaré aux lanternes :


Demis de poissons éteints par sursauts dans le sable, et trois quarts de retour des crabes vers la mer.


 


"Le parti pris des choses"

 


 


【訳詩】ウンガレッティ「死期」 [訳詩]

「死期」  ジュゼッペ・ウンガレッティ


 


ヒバリのように渇いて


蜃気楼を突き抜けて死ぬか


 


ウズラのように


海を渡り終えたあとの


最初の草むらのなかで


もう飛びたくないと


思って死ぬか


 


しかし視力を失ったゴシキヒワのように


歎きながら生きたくはない


 


****


 


"Agonia" Giuseppe Ungaretti


 


 


Morire come le allodole assetate


sul miraggio


 


O come la quaglia


passato il mare


nei primi cespugli


perché di volare


non ha più voglia


 


Ma non vivere di lamento


come un cardellino accecato


 


****


 


"Agony" Giuseppe Ungaretti  (Translated Andrew Frisardi


 


To die like skylarks thirsty


over the mirage


 


Or like the quail


after crossing the sea


inside the first bushes


because it has no wish


to fly anymore


 


But not to live lamenting


like a goldfinch blinded


 


 


****


 


From " L'ALLEGRIA"(『喜び』, "Joy", 1931



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