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細田傳造『みちゆき』──細田傳造はどこへ行く? [Book]

細田傳造『みちゆき』(書肆山田、2019年5月10日刊)

 

Amazonでレビューしようとしたら、まだ発行されてなかった(笑)。傳ちゃんは筆者の弟子なので(笑)、厳しい感想を、「謹呈」詩集なれど、書こうと思います。大手出版社で、一流詩人(田村隆一など)、作家(石川淳など)を相手に仕事をしていた友人は、「その人をだめにしてやろうと思えば、ほめまくればいいのだから」と言っていた。そんなことを知ってか、知らずか、世の中で詩集なるものを公にしている方々は、みんな褒め言葉が大好きである。むしろ、褒めことばしか受けつけない。

 

こと、傳ちゃんほど、「自慢」から遠い人もいない。本書の、これまでの詩集が並べてある箇所のどこにも、snsの紹介にも、「中原中也賞受賞」「丸山薫賞受賞」なる言葉はない。傳ちゃんは、それらの「勲章」を経歴の中から消し去ってしまったかのようだ。事実、消し去ったのだろう。私は過去に、それらの「受賞」をもとに、彼の本をAmazonで購入し、レビューしてある。のち、傳ちゃんは、ふらふらと、こちらにやってきて、私の弟子になった(笑)。

 

 彼は、若い時は汗水たらして働き、妻を愛し、自慢の孫までいて、もう人生は完成している。そのうえ、詩まで必要なのか? 事実、二つの賞を受賞した詩集を編んだときには、必要だったのだろう。その後、おおぜいの詩人と交流し、自慢もせず、末席に連なり、なにかを学ぼうとしていたようだ。

だが、本詩集は、はっきり言って、もう詩を必要としていない人の詩集なのだ。多くはFaceBookで発表されていて、パソコン画面で読んだときは、ほんとうに魅力的に感じたものが、いざ、活字にされたのをみると、せっかくつかまえた青い鳥が、黒い鳥に変わっていたように、変質したのを感じる。推敲されたのか、どうかわからない。

どんな言葉も、死んでいるように見える。それは、細田傳造という自意識につらぬかれ、恐る恐る過去の記憶が提出されている。自虐ギャグのような意匠をまとって。

 

 さて、細田傳造はどこへ行けばいいのか? 詩人になるには、もっと下品にならなければならず、小説家になるには、もっとハングリーにならねばならず、品格のある人はどうしたら、いいのか? 今さら人品が変えられずはずもなく──。

 

 それにしても、版元を、書肆山田→思潮社→書肆山田と変えたのは、なにか意味があるのか?(そういう人がままあるようだが) 思潮社が、(ブランド力を高めようと)敷居を高くしているのか? 私の印象では、本作りにおいて、思潮社の本は一流である。それは、あくまでも、造本においてであって、中身は関係ない。中身は、かなりレベルの低いものも出している。「有名詩人」でも、書肆山田に流れるのを見かけるが、はっきり言って、装丁、編集において、思潮社と比べてかなり落ちる。本書の編集もかなり雑(とくに本文割り付け)であることが見てとれる。挟まれていたしおりには、「書肆山田版詩集」のお歴々が並んでいるが、タイトル+名前を見て、買ってまで読みたい詩集はない。ま、そういうことである、傳ちゃん。詩集、ありがとうございました。傳ちゃんだから、いただきました。



みちゆき.jpg




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【詩】「ねじの回転」 [詩]

「ねじの回転」

 

ヘンリー・ジェームズの『ねじの回転』は、彼の恐怖小説の怖さからいったら、中程度の作品だ。「ねじの回転」というイメージはいかにも怖ろしげだが、作中、「ねじの回転」は出て来ない。果たして、この題名によって、なにを言いたかったのか──などと考えながら、同時に、式部のことを思えば、大聖堂は焼けて、ガーゴイル(この建築にある、雨樋のような魔除けのような彫刻)の取材もできない。

燃える大聖堂の写真は、私には「金閣寺」と重なり、不謹慎な想像であったか。だが、想像が働くのを誰にも止められないだろう。そしてジェームズの作品中で一番怖いのは、固有名詞が出て来ない、人間関係の不思議さを書いた作品で、題して「友だちの友だち」

あの詩人はきっと、無名な人間の作品を冊子に載せるのに許可などいらないだろうと考えたのだろう、というか、そんなことさえ、思いつきもしなかったのだろう、現に、私はぬか喜びし、小さな砂粒のような疑問を忘れようとした、

毎月出していたその冊子は一年以上届けられたが、ある日突然来なくなった。それが終わったのか、送るのをやめたのか、知らないし、関心もない。格上だと思っていたので、毎月届くごとに、感想を絵葉書に書いて送ったが、なんら反応はなかった。詩集(冊子程度のものだが)も出すごとに送ったが、なんら感想はなかった。思えば、その人は、周囲の「格下」の人々とそういうつきあいをしていた。一見気安げ、しかし、なんらかの理由で、その人を利用していて、その利用が終わったら、何食わぬ顔して切るのである。つまりは、友人ではなかった、知人でもなく、そう、ある事柄を、利用「させてもらっていた」

思えば、その人の作品をいいとも思わなかったし、どこにも魅力を感じなかった、ただその人が「有名人」だったので、お追従をしていたのだ、その人はよい人柄とは言えない、はじめからそういう印象だったので、とくに残念なことはないが。こういう心の襞を、ヘンリー・ジェームズは、もっと精緻にうまく、描く。

ひとには心があり、それは、ナマモノ。そしてそれを、ときには、

幽霊と呼ぶ。


マドレーヌ1904.jpg


 

 


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【詩】「宣長の余白」 [詩]

「宣長の余白」

 

紫文要領は余白こそうつくし

式部という亡霊のあれこれ

ためつすがめつ

脱稿してうすきいろの

紙に染むは時をへだてた

墨のにおい

ひとつに源氏物語の小琴

つま弾いてたそがれる

幹空洞

その余白によって

はげしく読まれていくものがある

激しく恋しすぎて

失神しました

と、

ラファイエット夫人でもない人妻が、

上品なパースを握りしめたまま

汗拭く

ここは、

ノートルダム大聖堂。






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清水哲男詩集『換気扇の下の小さな椅子で』──現代詩の宗匠の仮の姿にご用心(★★★★★) [Book]

『換気扇の下の小さな椅子で』( 清水哲男著、2019年1月1日、書肆山田刊)

 

すでにAmazoでは、古書で高値(3000円以上)がついている。一番安いのを検索したら、北海道の古本屋ので、だれぞ、寄贈された人が売ったのかしら? しかし、e-honには、たいてい定価であるので、(2200円+税)、しかも生協を通して5%offで購入。某詩人など、著者より寄贈されて、読むのがもったいないから、ページを開く前に飾ってあるそうですが。金を払って買って読む人とどっちがありがたいんでしょうかね?(笑)、著者にとって。

 ここにある詩群は、八十歳を迎えてしまった、著者の老年の心境が、著者得意のマイナーポエットの趣で描かれている。こういう詩は、実は外国にはない、日本特有のもので、やはり、著者の出発点であった、俳句から来ているのではないかと思わせる。著者は、伊藤浩子氏とは対照的に、知識を決して出さない。「能ある鷹は爪隠す」方式である。ゆえに、バカが、こんなんでいいのかと、けっこー、「同類のつもりで」寄っていく。しかし、清水哲男と、清水哲男のエピゴーネンとは完全にちがう。そこんとこ、勘違いして、人生誤ってしまう方々も多いので、ご用心! 著者の隠された知と心を読み解くには、数十年の修行がいる、そういう詩集である。




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伊藤浩子詩集『たましずめ/夕波』──平成最後の華麗なるテクスト群(★★★★★) [Amazonレビュー]

『たましずめ/夕波』(伊藤浩子著、 2019年3月27日、思潮社刊)

 そういや、自分は「詩集研究家」でもあった(笑)。本書も、生協経由e-hon(5%オフ)で購入しました。著者は、常に、文学的に、同年、同類の、居並ぶ詩人を一歩リード、しかも、ラカンだのフロイトだのを「振り回して」、何でも読み取っていこうとする、ほとんど絶望的な試みを果敢にされていて、他の追随を許さないので、5%offでも、3000円以上するこの本を買いました。(定価は、3200円+税)詩集は、身銭を切ってこそ価値のあるものと信じます。

 本書は、縦長変形の、みるからに、「たかそー」な本である。柳田国男『遠野物語』をテクストに、精神分析と著者自身の感性を縦横に往還させる新たなるテクスト。欄外の上下、行間にはみ出す註。これに拮抗できるのは、おフランスのデリダのみ。平成最後の傑作と見た。まー、買って読んでみてください(笑)。

 しかし、令和になったら、このようなテクストは、ブラックホールに吸い込まれてしまうかも(笑)。




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『ハンターキラー 潜航せよ』──『レッドオクトーバーを追え!』が懐かしい(★★★) [映画レビュー]

『ハンターキラー 潜航せよ』(ドノヴァン・マーシュ監督、 2018年、原題『HUNTER KILLER』)

 

 叩き上げの、米海軍攻撃型潜水艦、艦長のジェラルド・バトラーのでかい顔は、それなりに、暗い潜水艦の中では目立つ。粗い演技も、まあ、こういう仕掛けの映画には、妙に共感を呼ぶ。が、しかし、きわどいスジに配慮しすぎで、アメリカ大統領は、女性。一方、ロシア大統領は、プーチンとは似てもにつかない、筋骨隆々の美丈夫。主演バトラーも、助演オールドマンもイギリス人、捕虜となるロシア潜水艦艦長の俳優は、スウェーデン人。で、どういう筋立てかというと、行方不明の米潜水艦の捜索命令を受けた、潜水艦「キラーハンター」が、極秘裏にロシア海域に侵入すると、そこには、攻撃を受けたロシア潜水艦が漂っていた──。

 近づいて、攻撃された穴をみると、それは外部からの魚雷攻撃ではなく、内部の爆発物だと、ノンキャリアでも現場の経験豊富な艦長のバトラーは判断する。内部には、生存者がいて、ロシア人の艦長と部下が二人。二人を救助し、捕虜とする。一方、ロシアでは、国防大臣がクーデターを謀り、大統領を拘束、アメリカを核攻撃しようとしていた……。ことを、ロシアに潜伏していたネービーシールズが、知り、参謀本部に、ドローン画像を送る。

 「ハンターキラー」に攻撃命令が下るも、世界戦争を避けるため、バトラーは最後までこらえ、相手に先に攻撃させて、迎撃し、相手を壊滅させ、ロシア大統領を救う……てなハナシなんですけどね(笑)。そして、バトラーは、あの大顔で、あくまでりりしく、観客の感動を誘う。ま、こういうリアリティのなさでも、感動できるヒトはいいですね、という、そういう映画。

 最後までエンドクレジットを見ていたのは、私ひとりでした(笑)。アレック・ボールドウィンが副艦長(艦長は、ショーン・コネリー!)だったかな、で、最高にかっこよかった、『レッドオクトーバーを追え!』(1990年)がなつかしー(笑)。この映画の超豪華キャストには眼を見張るばかりである。もう30年近くも経っていたなんてね。




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【詩】「この女たちのすべてを語らないために」 [詩]

「この女たちのすべてを語らないために」

 

狭い焼却炉で焼かれていく父の

最後の陰毛の一本、その色、

あるいは、宇宙空間に漂うナチスの

文字。ああ、オデュッセウスよ、決して

渦巻きを見つめてはならぬ、かつて、

私は地中海の水に足を浸したことがあった

九月の初めで、水は、

氷を思わせるほど冷たかった、だから、

難民の粗末な船から落ちた子どもは

死ぬ

そんな未来の悲惨さなど知らない私は、

それでも必死で水中を見つめ、そこに

ヴァレリーがほほえむのを

見た。

見よ、魔女はどこにでもいる、この女たちの

すべてを語らないために、

同題の、はじめてのカラー作品を作った

ベルイマンは、あえて、

その作を失敗作とする

必要があった。



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妹、小林貴子の油絵(100号) [絵画]

F100 「塊・情」Oil on canvas

「今年も入選できました。課題は多いですがご高覧いただけたら嬉しいです。」

春陽展 国立新美術館 4/17~4/29 (23休)10:00~


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『リヴァプール、最後の恋』──リトル・ダンサー、ジェイミーの体が美しい(★★★★★) [映画レビュー]

『リヴァプール、最後の恋』(ポール・マクギガン監督、 2017年、原題『FILM STARS DON'T DIE IN LIVERPOOL』)

 

『ラッキーナンバー7 』(2006)で、パズルのような展開を見せた、ポール・マクギガン監督ゆえに、今回も、そう簡単には、老いた女と若い男の恋を描かない。たとえ、女が往年のスター女優で、四度の結婚、そして、その夫のひとりは、義理の息子にあたる人物で、しかも、今回の「恋人」と、ほぼ同年の息子もいても、お互い独身であるのだから、世間的には、とくに咎めだてされるものではない。それを前提に、若い男の方の、家族(母、父、兄)が、二人に協力し、支えてくれる。アットホームな(笑)恋愛モノなのである。これが、男が年上の方だったら、なんの問題もない、というか、ドラマも生まれないことであろう。

 アネット・ベニングはそうすきな女優ではないし、対する、若い恋人役の、ジェイミー・ベルも、地味で色気もないように思った。しかし、若い男との恋は、私のテーマ(笑)なので、見ないわけにはいかなかった(笑)。見てびっくり、こんな陳腐なハナシを、実に魅力的に、おしゃれに作っているのである。ハナシは飛ぶが、スピルバーグの『ウェストサイド・ストーリー』のリメイクに期待がかかる。

 『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベルは、やはり、ダンスが得意なのか。トラボルタの踊りをマネするシーンはすばらしい。何度でも見たくなる。しかも体がたいへんきれいで、顔の作りは地味ながら、端正な表情が出せる。若い男が、冷やかしでなく、本気で年上の女を愛する誠実さが伝わってくる。一方、アネット・ベニングも、素顔を晒し、シワもシミも、フェイスラインの崩れ具合も、恋愛にはなんの支障もないことを納得させる。

 ジェイミー・ベルが部屋のドアを開けるたびに、時間が飛んで過去のシーンへと展開し、舞台じたてのようであり、リヴァプールと、ニューヨーク、カリフォルニアの、舞台の国と、ハリウッドを比較させ、ベケット、シェークスピア、テネシー・ウィリアムズなどへの、言及、引用をし、最後は、ほんとうの恋の終わりに涙を流させるという趣向は、たいへんなワザである。




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『現代詩手帖 2019年 04 月号』──日本に詩は存在しない (★) [Amazonレビュー]

『現代詩手帖 2019年 04 月号 』( 2019年3月28日、思潮社刊) 

 

 いま、とくに文学シュミのない一般人のあいだでも、テレビの「プレバト」で、俳句を「ならってみる」のはブームである。俳句は文字数もすくなく、「場の文学」であったので、独立して作品を見た場合、どの程度の文学レベルなのかはよくわからない。誰でも、「ひねれる」。それが、ついに、詩にも及んでしまった。本誌は、その証左である。どこの誰ともしらない、本誌の編集者が権威と信じる御仁が、えらそうに、詩を指南している(笑)。こんなものを、1000円以上も出して買う、一般読者がいるとも思えない。

 もともと、日本における現代詩とは、フランス近代詩の輸入から始まった。それも、誤った解釈の輸入であった。T.S.エリオットによれば、フランス近代詩がどんなものかよくわかる。それは「象徴派」という言葉で一括りできる集団であって、決して個人個人の詩人の芸術ではない。近代詩の正統は、イギリスの詩にある。それをまったく学んでいない日本の近代詩人、現代詩人の「作品」は、恣意的な短文のつらなりにすぎない。その短文の作者を権威づけて、自由にあやつり、この雑誌は成り立っている。すでに地方の大型書店にさえ見あたらず、発行部数は、500部程度とみた。


 


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